牛乳が安全になるまで

こんにちは、デンネツ広報担当です。
「カエルを牛乳に入れると腐らない」というロシアの俗説をご存知ですか?荒唐無稽に聞こえますが、実際にカエルの皮膚には細菌の増殖を抑える成分が含まれていることがわかっています。昔話の真偽はさておき、「ミルク=細菌が増えやすい液体」をどう守るかという発想は、古くから人々の関心事でした。
〈かつて牛乳は“危険な飲み物”だった〉
乳糖を分解する酵素「ラクターゼ」は、腹部症状の原因となることがあります。世界では成人の約75%が乳糖不耐とされています。
18〜19世紀には、家畜の牛から搾った乳を飲んで命を落とすことも珍しくありませんでした。米国中西部では、放牧牛が摂取した有毒植物(トレメトール)が原因で“ミルク病”が多発し、何千人もの人が被害にあいました。
また、1840年代の都市部では、牛乳の最大の消費者である5歳以下の子どもの死亡率が最大50%に達したといわれています。
糖とタンパク質が豊富な牛乳は、結核・ジフテリア・腸チフスなどの感染症や、大腸菌・サルモネラ・リステリアといった細菌が繁殖しやすい環境だったのです。
〈パスツールが変えたもの〉
細菌学者ルイ・パスツールが考案したのは、もともとワインの腐敗を防ぐための加熱処理(低温殺菌)でした。この原理が牛乳にも応用され、安全性が大きく向上します。
ただし普及には時間がかかり、アメリカで義務化されたのは20世紀初頭、イギリスでは1949年。日本では現在、超高温瞬間殺菌が主流となっています。
かつては命を脅かすこともあった牛乳ですが、科学の進歩と衛生管理の向上によって、いまでは毎日の食卓に欠かせない存在となりました。
安全は「当たり前」ではなく、多くの工夫と研究の積み重ねによって守られている――そんな視点を忘れずにいたいものです。